こんばんは、建設現場で働くスナックママのAnanです。
いよいよ自分のお店をオープンすると言う時も、私は現場に居ました。
震災復興現場で3年程経過したある日、雇われママ時代に良く飲みに来てくれていた不動産屋さんが現場に図面を持って駆けつけてくれました。
「この物件貸すって!」
私は雇われママ時代の経験から、次は自分で店を出すと心に決めていて、お店の名前も決まっていたし、どの場所で、どのくらいの面積で、営業システムも、使うお酒も、経営計画が出来ていたのですが、その物件は、正に私の希望する立地条件にピッタリの物でした。
居ぬきではないので改装が必要でしたが、これ以上の物件はなかなか無いのですぐに家主さんの所へ挨拶に行きました。
現場の方には、「お店を開くことになったので退所しなければならない」と伝えました。
ところが思いもよらない答えが返って来ました。
「お店をやりながらでいいからこのまま手伝ってくれ」
私は耳を疑いましたが、そもそも私が病気やオーナーとの決別などの経緯があったにしても、建設コンサル会社での経験から、復興現場で何かお役に立てることはないかと思ったからで、全国各地からこの町の復興のために集まってくれて、プライベートも確保できないようなプレハブの宿舎に何年も寝泊まりして、御尽力下さっている大手ゼネコンさんはじめ業者の皆さんを思えば、手伝ってくれと言われて、地元の人間である私が断る気持ちは全く無かったし、頼まれたら嫌とは言わない性格、頼まれなくなったらおしまいだ!と「現場もお店もやる!」と言う方向に決めました。
カテゴリー「ママのアドバイス【オープン編】」では、これからスナックのママになろうとしている方へ、オープンまでに必要な事項や、マネジメント・考え方など、私の経験を交え、一例としてご紹介しています。
お店の営業形態を設定し、物件の用途地域を調べる
お店の立地はとても重要です。物件選びには、どんな雰囲気のお店を作りたいか、営業時間、営業形態の設定等によって立地条件が変わってきます。まずは、都市計画法に基づいた「用途地域」を確認しましょう。パターンとしては次の3つになります。
A. 接待を伴う → 風俗営業許可必要 → 居住地域以外 → 午前0時以降の営業不可
B. 接待を伴わない → 午前0時以降営業 → 居住地域以外 → 深夜酒類提供飲食店開始届
C. 〃 → 午前0時以降営業しない → 用途地域の特定無し
また、用途地域による要件を満たしていても、お店から半径100m以内に、学校や病院などの「保護対象施設」がある場合は、風俗営業許可は下りませんので注意してください。
許可申請は、所轄の警察署です。用途地域は、仲介してくれた不動産やさんでも情報を持っていると思いますが、自治体の窓口、ホームページで調べられます。
大家さんと賃貸契約を交わし、改装工事の承諾を得る
営業するに当たって大家さんとの良い関係を保つことは重要です。お借り出来て初めて営業出来るわけですので、小さなことでも大家さんにお伺いを立て、了承を得ましょう。改装業者さんは、大家さんから指定されることもあります。その場合、あなたが依頼したい業者さんがいるなら、大家さんにその旨を話し、了承してもらいましょう。
大家さんには、節目節目でご挨拶に伺い、感謝の気持ちを伝えましょう。大家さんは、テナントが繁盛していた方が嬉しいに決まっていますので、あなたの真剣な姿勢があれば、来店して下さったり、お客様を紹介して下さったり、強力な応援団となってくれます。
設計に必要な事項を確認し、予算を立て設計する
改装業者さんが決まったら、何回も打合せを重ねていくことになります。設計する上で必要なのは、保健所・警察署の基準を確認することです。
【保健所確認事項】飲食店営業許可を取得するためには、店内にもいくつか基準があります。壁の材質、仕切り、換気、シンクの数、厨房設備の配置、トイレの位置、手洗い場の数、照明、廃棄物容器など・・・基準をクリアしていないと許可が下りません、都道府県によって違いがありますのであらかじめ所轄の保健所に確認し、設計しましょう。
【警察署確認事項】風俗営業許可、深夜営業の届け出のどちらかが必要な場合についても、床面積、客室の見通し、照度、騒音・振動など、条件があります。所轄の警察署に確認し、設計しましょう。
その他、電気屋さんや設備屋さんは、改装工事業者さんが一括で手配してくれますが、カラオケ機械のリース業者さんや、ゆうせん、インターネット光回線、Wi-Fi、クレジット端末などの業者さんは別ですので、自分で申し込み契約し手配します。改装業者さんの設計図に、コンセントの数や位置、棚を作ってもらったり、冷蔵庫やカラオケ機械を設置する場所のスペースを確保してもらいます。改装工事進捗のタイミングに合わせて各業者さんに設置に入ってもらわなければならないので、上手くすり合わせ出来るよう密に打合せしましょう。
改装業者さんに図面と見積書の作成を依頼します。受け取り融資や営業許可の申請に必要です。
工事完了予定日が決まったら、オープンの日を設定します。縁起の良い日や語呂の良い日などを選ぶ方が多いようですが、私は気にしませんでした。工事の都合で当初予定より1週間延びた記憶があります。
あまり広いお店は落ち着かないと言われますが、お客様が少ない日は、簡単なもので仕切るなど工夫はできるので、面積は狭いよりは広いほうが良いです。座席の配置は面積にもよりますが、出来るだけ、大小どんな会合が行われても対応できるような配置換え可能な設計にした方が良いです。スペースを区切ってしまうと、団体さんが入るときに動かせない融通の利かない間取になります。どのような客層にしたいのかもありますが、臨機応変に座り方を変更できる設計が良いと思います。
お客様目線での設計になりがちですが、一番大事なのは、そこで働くスタッフさんが働きやすい設計にすることです。スタッフさんを一番に考えられないお店は繁盛しません。私のこだわり一覧は下記のとおりです。
1. カウンターの中は楽にすれ違える余裕をもたせる。
2. カウンターからの出入り口は両サイドに配置する。
3. 更衣室や休憩室を設ける。
4. スタッフの荷物置場をカウンターの中に作る。(お客様から見えない位置で、常に人が行き来する場所と言うのが大事、盗難防止のため)
5. カウンターは、身長の差異があっても手を伸ばしやすい高さ設定にする。
6. フロア、カウンター内、厨房内、床は全てフラットにする。(スタッフがつまづかないように)
椅子だけはケチらず、座ってみて疲れないものを選びましょう。ただし高級過ぎても疲れる場合もあります。カウンター席も背もたれのある座り心地の良いものにし、足置きは安定するフラットな板のようなものがいいでしょう。カウンターを低くして通常の高さの椅子にするのもとても良いですが、その場合は、カウンター越しにスタッフが上から目線の位置になってしまい、カウンターの床を一段低くしなければならなくなります。(カウンター越しの接客については後日アップします)
設備の設置取付は専門業者さんでなくては出来ませんが、物自体は自分で調達した方が安い場合が多々ありますので(中古品、リース品等)、業者さんが仕入れた場合と比較して、安ければ自分でも調達します。私が好きで足を運んでいたのは、「テンポスバスターズ」です。店舗のための物品専門のお店ですので、グラスやマドラーなどの細かいものから、コールドテーブル、製氷機、冷凍庫など大型のものまで、サイズも色々、中古や新古品など取り揃えており、品数が多く、実際に商品の状態を確認できるし、ネット商品との値段を比較する指標になります。
ちなみに私は、コールドテーブル、製氷機、冷蔵庫、冷凍庫、タオルウォーマー、手洗い、カウンターシンク、入口のドア、ボックス席とテーブル、カウンターの椅子を調達しました。
カラオケを使用する場合は、防音工事も同時に施工してもらいましょう。
お店の理想の形はあるとは思いますが、出来るだけ金額を抑えられれば後々楽になります。
必要な金額が出そろったら、経営計画書を作成
1. メニューを作成し、飲料、食材、必要な仕入れ金額を算出。
2. お店の座席数を踏まえ、季節毎(月毎)、曜日毎に、お客様の予想来店数、客単価を算出。
3. 定休日、営業時間、スタッフ人数と時給を設定し、人件費を算出。
4. 家賃、光熱費、カラオケがある場合はリース料、ゆうせん・固定電話・フリーWi-Fi等の通信費などを算出。
来店数と設定した客単価が決まると、必要なスタッフ人数が見えてきます。事前に地域の周りのお店の時給をリサーチしておきましょう。夜10時以降は深夜の単価となりますので注意してください。※スタッフの給与形態についても後日アップします!
私はお店が軌道にのるまでの約3ヶ月程度の運転資金と、改装工事費を合わせて経営計画書を作成しました。経営計画書のひな形は、各地域の商工会議所さんに用意されていますのでそれを活用すると良いと思います。
経営計画書は、事細かに計画されている方が印象が良いです。理想だけの絵に描いたような計画では信用されません。
売上推定金額については、例えば下記のように月毎に細かく計画が立てられていると良いです。計画段階では、予想よりも厳しめに計画しておくことです。現実は予想通りに行くとは限りませんし。※もちろん予想以上の売上になるように私も今後色々なアドバイスをアップしていきますね!
※数字は、年間平均売上を100とした場合の比率の一例です。
◎印は平均売上が見込める標準月の一例となります。
1月:110(新年会)
2月:60(日数も少なくイベントも無いので最も売り上げが低い。)
3月:110(送別会)
4月:110(歓迎会)
5月:80(GWの帰省客はあるものの、GWでお金を使うためその後は減)
◎ 6月:100(船の出入りが多くなる)
◎ 7月:100(ボーナス時期、梅雨明け、船の出入り)
8月:110(ボーナス時期、お盆休み、お盆が明けると減)
◎ 9月:100(各種イベントの多い時期、船の出入り)
◎10月:100( 〃 )
11月:100(月末から忘年会が入る)
12月:120(忘年会)
仕入れは売上と比例して算出してください。
《1ヶ月の収支例》
■売上:195万円(営業日26日、一日の来店数平均15名、客単価5,000円)
※標準月の来店客数の算出は、曜日毎に計画を立てます。
営業時間19:00~24:00、日曜定休の場合、
月:15人、火:10人、水:15人、木:10人、金:20人、土:30人
合計100人、日平均16.6人 → 15人/日と設定した例になります。
■人件費:75万円(スタッフ3人×25万円)
■仕入れ:20万円(アルコール、その他飲料、チャーム、フード材料)
■家賃:15万円
■光熱費:8万円(電気、水道、ガス)
■通信費、リース料:8万円(カラオケ機械、モニター、ゆうせん、Wi-Fi、固定電話)
■福利厚生費:1万円(スタッフミーティング費用、体調管理グッズ等)
■車両費、燃料費:3万円(スタッフ送迎、買い出し、営業に使用する車両、燃料費)
■広告宣伝費:1万円(新聞広告、ホームページ、名入れライター等)
■交際費:1万円(お得意様の誕生日、イベント料)
■諸会費、手数料:3千円(各種会費、銀行振り込み、両替)
■保険料:3千円(共済掛金)
■消耗品費、事務用品費:5千円(清掃・除菌用品、厨房用品、コピー用紙、プリンターインク等)
■借入金返済:15万円
■予備費:10万円
この他、家財保険料、雇用保険料、食品賠償共済料、年に1度支払わなければならないもの、店内の備品が壊れたとか、排水管が詰まったとか、換気システムの故障など、色々なことが起こりますので、予備費は毎月確保しておきたいです。
この例ですと、1ヶ月の収支は、
売上195万円 - 経費158.1万円 = 残36.9万円
となります。もし一日1000円売上が変わったら、マイナスになるほど繊細な数字であることがわかると思います。お客様一人一人へのきめ細かな対応、スタッフさんの育成、コスト削減が大事になってきます。いかに経費を抑えられるか、今必須でないことにお金を使いすぎない計画書にしましょう。
一番経費率が高いのは人件費です。この例では3人で切り盛りする計画としています。ママもその中の一人としても良いと思います。ママの報酬は残と考えて、スタッフさんと共に売上を上げ、無事結果を出した暁にはスタッフさん含め全員に還元しましょう。(スタッフさんの雇用についてはまた後日アップします)
これを持って銀行、商工会議所(政策金融公庫)に融資を申し込みます。
どちらも、融資が受けられるまで、担当の方が付いて下さり、経営計画書の書き方やアドバイスももらえますので、オーナーママとなる覚悟さえあれば、何も心配することはありません。
融資が下り、工事着手日が決まったら、周辺の方々へご挨拶に伺いましょう。工事に伴う業者さんの出入りや音でご迷惑をおかけしますと言う挨拶です。大家さんにも忘れず工事着手の連絡をしましょう。
看板の発注を忘れずに!
長くなりましたごめんなさい。お読みいただきありがとうございました!
♪ 物件選びは、営業形態を決め、その営業が出来る条件を確認する(用途地域など) ♪ 大家さんと良い関係を築く ♪ 改装工事は、スタッフ目線で考えることを忘れずに ♪ 改装工事や備品にお金をかけすぎない ♪ 経営計画は、季節毎、曜日毎、出来るだけ細かく厳しく、自分の収入は最低限で
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